バベる! 自力でビルを建てる男 岡敬輔
近代以降の日本のジュエリーを考えるときに、
なぜ、この時代はこの形なのか?
とか、この形が生まれた背景をどう考えれば良いのか?
なんて部分でつまづくところが多く
思考の枠組みを、
ファッションや、建築に求めたりしています。
そういう中で、出会ったのがこの岡敬輔さんによる
バベる! 自力でビルを建てる男
という本。
岡さんを初めて知ったのは、ラジオ番組で、
そのときは、蟻鱒鳶ル というビルの名前、即興で建物を建てている、学生時代は、RCサクセションが好きすぎて、RC作成所という名前の会社を作ろうと思った。
などなど、ネーミングの上手さと、即興建築という奇抜さがとても印象に残っており、
彼の著書を読んでみることにしました。
感想ですが・・・
現代の哲学者ですね。哲学者であり実践者・・・
この方すげー
自分の場合、ジュエリーに転用できるヒントはないか?という視点で読み進めはしたのですが、
文章が面白いので、グイグイ引き込まれる・・・
男が、一人でビルを建てる というお話の中に、自問自答だったり、そこに至るまでの紆余曲折があったりするのですが、
行ったり来たりする思考のおかげで、
モダニズムというムーブメントとはいったい何であったのか? ポストモダンとは? という視点が立体的に浮かび上がってきたように思います。
ジュエリー史だけ見ると、ジャンルが狭すぎるせいか、どういう文化的な流れの中で、こういうデザインが生まれたか?
というものが掴みにくい部分があったものが、
建築史はモノがでかく、建築について考える人も多いために、より考え方が具現化されているというか、立体的に見つめることができるというか・・・
今回の読書で少し建築史思考が深まり、その視点でファッションを見つめてみると、なるほど建築史も、ファッション史もムーブメントの根本の背景は同じであって、
そのような視点でジュエリーを見てみると、
やはり、ジュエリーデザインも、建築の歴史と重なり合う部分は多いわけで・・・
そういう事は、以前から頭でわかっていたことだけれども、
今回の読書を通して、再度考えてみると腹に落ちるというか、
納得できる部分は多かったです。
とか、ここまで書いて、自分が何書いてるのか伝わるような文章を書いているのか不安になってきたけど続けよう。
そして、別の面で感心したのが、
コンクリート愛
現代の建造物では、コンクリートでビルを建てるとき、水をおよそ60%使うのだそうですが、
建てやすさなどのメリットはあったとしても、耐用年数が犠牲になるそうです。
Arimasutonビルを建てる際には、耐用年数をより長くするために行き着いたのが、水の量は37%という数字。
ただ、材料にこだわりました。ではなく、「何のために」という部分がしっかりあるからこその、
水の量37%だったり、砂利はどういうものを使うのか?だったり、そういう発想に行き着いています。
これは、岡さんが語っているからわかることであって、
語られなければわからないことです。
経済的な効率を追い求めるのではなく、岡さんにとって価値があると信じるものを具現化していくその姿勢。それは、大いに共感できましたし、大きな勇気を与えられたような気がします。
著書である岡さんを哲学者であり実践者であると書いたのは、
この物語の中で、ひたすら、「なぜ」「どうして」「何ために」「なんの意味が」ということをひたすら考えます。
何十年も考え続け、十数年かけて一つのビルを建て続けています。
そのスピード感は、現代のスピード感とは全く相容れないものではありますが、
人間の思考というものは、そう簡単に真理に到着するというものではなく、その思考が誰かが考えたものの借り物でなければ、様々な試行錯誤の末にいきつくのだと思いますし、
一人の人間が小さなビルを建てることにこれ程の時間がかかっているということは、いかに現代が様々な面で効率化されているのか ということに気付かされます。
そして、ああでもない、こうでもない と、思考を何十年と続けてきたが故に、簡単に折れないような思考となり、少々の事ではくじけない実践者としてのハートが養われたのではないかと・・・
読了後、現在、かいつまんで読み直し中。
私にとって、大変ヒントの多い本です。
モノ、動産の相談窓口 肥前屋質店(予約制) 092-651-2197
ジュエリー関連はこちら VINTAGE JAPANESE JEWELRY
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